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先祖が培ってきた技術を使う―切削技術

 切削する昆布製品といえば"とろろ昆布・朧昆布"です。ほんぽの長年培ってきたとろろ昆布の製法についてご紹介いたします。

現代の機械化した製造工程について

 近年テレビ番組などで食品や日用品など、私たちの身の回りにあるさまざまな物の製造工程が紹介されています。その多くは機械化され、日本の技術力の高さが見せられます。しかし、機械化される反面、人間でないとできない部分も多々あります。特に商品の仕上がりの出来の確認は人間の目のほうがより確実だと思います。

弓なり式機械について

 ほんぽのとろろ昆布を作る技術を語る上で欠かせないのが、弓なり式の機械を使用していることです。弓なり式の機械は一昔前の機械ですが、ほんぽが使い続けているのには理由があります。通常とろろ昆布を削る場合まず機械の下部に、プレスし圧縮した角状の昆布原料をセットします。その後、少しずつカンナ台にセットされた刃で昆布の原料を削っていくのですが、最近の機械ではかんな台の左右にレールがついており、それを軸にカンナ台を押さえています。しかし、弓なり式の機械はカンナ台の上部に振り子のような弓状の板バネがあり、そこからカンナ台を押さえることによって削っていきます。最新のものと違いレールで左右から押さえるのではなく、上部から板バネによってカンナ台を押さえるので、よりムラのないきれいなとろろの顔が出来上がります。また、ほんぽでは削られたとろろを掬い取るのはあえて人間が直接手で取るようにしています。そうすることできれいでは無いとろろの顔は省くことができます。ほんぽではより美しいとろろを作成するために多少の手間は惜しみません。

アキタについて

 美しいとろろを作るのに欠かせないのは機械だけではありません。ほんぽでは熟練の職人により、ムラのない商品作りに努めております。まず、とろろの顔取りです。とろろの顔(表ともいう)とは、削られた状態のままのとろろ昆布のことです。お店でとろろを購入すると紙のような1枚のとろろ昆布に丸められたとろろ昆布が包まれています。それの包んでいるとろろ昆布のことを顔といいます。
 顔取りでは機械から出てきたとろろの顔を機械のリズムに合わせて掬い取るのですが、これが大変難しいのです。慣れないうちは、機械のリズムがなかなかつかめず、つかめたと思ったら今度は刃の交換になるので、またリズムが狂うという繰り返しです。美しく顔を取るのにも熟練の技術が必要なのです。
 そして、最も重要なのが刃に掛けるアキタです。アキタとは、とろろ昆布やおぼろ昆布を削る包丁の刃先を微妙に、肉眼では確認できないくらい曲げることで、熟練の技が必要です。アキタがかけられた刃先に触れるとざらっとした感覚があります。とろろ昆布は一般的に削るという表現が用いられることが多いですが、アキタがかかっている刃物を使う場合それは引っ掻くというイメージのほうがしっくりときます。アキタがうまくかかっている刃物で作られたとろろ昆布は、絹織物のように表面が滑らかで形も整っており美しいです。逆にアキタがうまくかかってない場合、削られたとろろ昆布はすだれのようにまだらでごわごわしています。また、ほんぽではアキタを掛ける道具にもこだわりを持っており、普通の鑢をアキタ専用に加工したものを代々使用しています。

ほんぽのこだわり

 機械化し、効率を上げることでコストダウンを狙う企業も多い中で、ほんぽは昔ながらの伝統的な製法を守りながら、より美しいとろろを皆様にお届けするため日々努力しております。何故きれいに作りたいのかと問われたら、某登山家が述べた「そこに山があるからだ」というように「きれいなとろろを作りたいからだ」と申しあげるしかありません。と、少しかっこよく述べていますが、要はこだわりの問題です。きれいなものを作り、それを皆様にお届けする。それが日本のものづくりの原点であり、日本人のアイデンティティのひとつだと思います。先人たちが培ってきたものを後世に伝承していく、それが、ほんぽの「先祖が使ってきた技術を使う」です。