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東アジアの食卓に藻食を加える

東アジアの藻食事情

 私たち日本人は当たり前のように海藻を食べていますが、海外で海藻を食べる習慣のある国はかなり少ないといえます。日本のように海藻を食べる習慣のある国として思い浮かぶのは、韓国や中国でしょうか。韓国では誕生日などのめでたい日にわかめスープを飲む習慣がありますし、中国でも昆布が良く食されています。
 しかし東南アジアの方に行くと藻食の文化はほとんどありません。工業用としての多糖類の採取や一部寒天系の海藻が消費されているとはいわれていますが、食習慣においての「海藻」の位置づけは、貧困層が栄養補給と空腹を満たすことを目的として岸に漂着した海藻を消費している程度で、中間層以上ではこの地域の殆どの国民には馴染みのない食べ物であるとされています。

理由① 海藻の栄養素について

 弊社が海藻を東アジアの食卓に加えたい理由は2つあります。1つ目は、海藻には豊富に栄養素が含まれているからです。海藻には特に鉄や亜鉛、マグネシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれています。ミネラルは五大栄養素のひとつで、生き物にとって必要不可欠な栄養素のひとつです。しかも、ミネラルは海中でないと自生できない栄養素です。もちろん人の体内でも生成することは不可能なため、食べ物から摂取する必要があります。
 牛乳のカルシウムなどミネラルが含まれている食材もありますが、あくまでも食物連鎖の結果であり、自生しているというわけではありません。ミネラルをバランスよく摂取することは、栄養学的にも人体の健康に理想的な状態を作り、現在、世界的社会問題となっている生活習慣病の予防にもつながります。
 日本でもそうですが中国では特に糖尿病、韓国では胃がんが問題視されています。生活習慣病は先進国でもいえますが、特に急激に経済成長した発展途上国において起こりやすく、食文化が豊かになったことが起因であると考えられます。経済が発展し、豊かになると肉食に特化するなど食生活に乱れが生じてきます。
 それまでの生きるために食べるというよりも食べること自体が娯楽になってしまい、おいしいものを好きなだけ食べるという飽食の状態になってしまうのです。そのような状態であるから、栄養のバランスが崩れ生活習慣病へとつながっていきます。弊社ではこのような状態を打破するために藻食を東アジアに広めていきたいと考えます。

理由② 創業の精神

 そして2つ目は、弊社の創業の精神にあります。弊社の創業者である本保多十郎は若い頃、京都御所御用達問屋の養子になり昆布の加工技術を学んでいました。しかし明治維新が起こり、京都での店の経営が難しくなっていくと、それを機に現在当社が構えている下関に移ります。
 下関は当時、松前船の寄港地として大変栄え、西の浪花とも言われていましたが、昆布の加工や卸問屋を行う業者はほとんどいなかったと言います。多十郎は昆布の加工技術を地元の人間に教えながら商売をしていました。多十郎がこの地を選んだのは、同業者との勝負をするのではなく、下関を中心に新たな昆布文化を発信させたかったからだと思います。実際、多十郎が教えた昆布の加工技術を持つ職人は北部九州にまでいたと言います。九州北部のおぼろ昆布文化を根付かせたのは弊社といっても過言ではないのです。

ほんぽの想い

 昆布などの海藻にはミネラルなどの栄養が豊富に含まれています。そんな栄養豊かな海藻が誰にも知られないまま海の藻屑になるなんてもったいないですよね。食料が不足し毎日飢餓に喘いでいる人々や、生活習慣病など食生活が原因で健康に問題を抱えている人々に、海藻の有用性を伝えたい思いもあります。そして未開拓の地で新たに昆布文化を伝える。代々受け継いできた創業の精神もあり、ほんぽでは東アジアの食卓に藻食に文化を伝えていきたいのです。